「世界一寛容な日本」願望に近い

五輪組織委・有識者懇談会メンバー デービッド・アトキンソン氏

 組織委で大会コンセプトを作っているときに、一番難しかったのは、日本人が考える「日本」はほとんど理想論だったことです。こうあってほしい、という願望に近い。日本のベストだけみればそうかもしれないということを、一般化しようとする。

 「多様性と調和」というコンセプトについて、会議では「日本は世界一寛容な国」という人がいた。日本はどんな文化でも取り入れて、日本は多神教で海外は一神教だとか。
 これは学問的には正しくない俗説です。
 寛容な面もたくさんありますが、夫婦別姓も認めないし、移民にかなり厳しいし、難民は受け入れない。「寛容」と言えるだろうか、」と議論になりました。

 日本は、いろんな人の意見は排除しないが、多くの場合取り入れもしない

 日本人は思い込みや俗説が多い。専門家に確認しない、検証しない。厳しく言えば、プロ意識が低い面があることは共通しています。それは寛容の一環かもしれませんが。
 例えば、東京五輪が日本経済の起爆剤になるというのも、俗説。エビを食べて長寿にあやかるのと同じ。数週間のイベントがGDP550兆円の日本経済に大きな影響を与えるはずがありません。
 五輪で観光客が増えるというのも、何の根拠のない思い込み。インバウンドが増えたのは5年前からですが、リオデジャネイロで五輪があるからと、開催の5年前にブラジルに行った日本人が多くなった事実はないです。自分たちがやらないのに、なぜ外国人がやると思うのか。

 日本人の決定的な問題は、クリティカルシンキング(批判的思考法)が十分にできないこと。これは、仮説を立てて、ロジックを分解し、データで検証し、結論を導き出すもの
 大学の問題が大きい。クリティカルシンキングができるようになるのは大学生の年齢。人間というのは勝手な思い込みをする生き物なので、それをなくすため大学教育が発達した。
 大学の4年間、先生とのやりとりで、思い込みで発言したら、根拠はなんですか?評価に客観性はありますか?と聞いて答えさせる。日本の大学はそれが十分にできていない。
 だから日本は事後対応しかできず、いつも後手に回る。事前に仮説をたてて議論しても、受け入れられないのです。予想はできるのに、何も手を打たない。
 重ねて言いますが、東京五輪はやっても、やらなくても、日本経済には中長期的にはさしたる影響はありません

「話長くてもいい」の観点

 森喜朗さんの発言による騒動が始まったころ「森さんの代わりはいない」という意見があった。これな情けない話。1億2千万人も国民がいるというのに。

 森さんの発言には、いくつかの問題点があります。一つ目は、女性の話が長いというのは、何をもって言っているのか。周りの人に聞いたエピソードベースの話で、何ら検証されていないものを、押し付けた。
 そしてそれに評価を持ち込んだこと。話が長いのはいいことですか、悪いことですか。しかも基準は男性の価値観ではないですか。
 女性の話が長いか、長くないか、女性蔑視か、蔑視じゃないか、ではなくて、仮に話が長いのであれば、それはそれとして受け入れないといけない、違っていいんじゃないか、という観点が抜けている。違いを受け入れていないことが問題なのです。男女に限らず、障害者、外国人、いろんな意見を出し合って、平等に考えていく。それが多様性。男女の問題だけに落とし込むのはおかしい。

 森会長の発言は、失礼ながら厳しく言えば、あまり深く考えていない発言です。海外は複雑になって、日本に比べて考えて話さないといけない世の中に変わりました。
2021.2.23(火)朝日新聞朝刊

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

クリティカルシンキング、本当にできない人が多い!





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この記事へのコメント

むさし嵐丸
2021年02月23日 09:01
批判的思考法クリティカルシンキング
そうだね!できないね!
でも、考えなきゃね!
meruちゃん
2021年02月23日 20:57
今も昔もクリティカルシンキングが出来ない人は
たくさんいた。
でも今は、出来る人の割合が少なくなっているのが
問題なんだよね。
10人の内、3人いれば事は進むが、
今は1人がやっと。
その1人は、当然他の9人から排除されるし、
やはり1人で成し遂げるのは厳しい。

>むさし嵐丸さん
>
>批判的思考法クリティカルシンキング
>そうだね!できないね!
>でも、考えなきゃね!