2021年02月03日 お探し物は図書室まで 本 雑記 ひとり言 『お探し物は図書室まで』青山美智子お探し物は、本ですか? 仕事ですか? 人生ですか?人生に悩む人々が、ふとしたきっかけで訪れた小さな図書室。彼らの背中を、不愛想だけど聞き上手な司書さんが、思いもよらない本のセレクトと可愛い付録で、後押しします。仕事や人生に行き詰まりを感じている5人が訪れた、町の小さな図書室。「本を探している」と申し出ると「レファレンスは司書さんにどうぞ」と案内してくれます。狭いレファレンスカウンターの中に体を埋めこみ、ちまちまと毛糸に針を刺して何かを作っている司書さん。本の相談をすると司書さんはレファレンスを始めます。不愛想なのにどうしてだか聞き上手で、相談者は誰にも言えなかった本音や願望を司書さんに話してしまいます。話を聞いた司書さんは、一風変わった選書をしてくれます。図鑑、絵本、詩集......。そして選書が終わると、カウンターの下にたくさんある引き出しの中から、小さな毛糸玉のようなものをひとつだけ取り出します。本のリストを印刷した紙と一緒に渡されたのは、羊毛フェルト。「これはなんですか」と相談者が訊ねると、司書さんはぶっきらぼうに答えます。 「本の付録」と――。自分が本当に「探している物」に気がつき、明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。◇ ◇ ◇ ◇ ◇一章 朋香 二十一歳 婦人服販売員「何が起きるかわからない世の中で、今の自分にできることを今やっているんだ」桐山くん「これ大好きなの。いいよねえ。みんなが幸せになれるお菓子って」小町さん二章 涼 三十五歳 家具メーカー経理部「いつかって言っている間は、夢は終わらないよ。美しい夢のまま、ずっと続く。かなわなくても、それもひとつの生き方だと私は思う。無計画な夢を抱くのも、悪いことじゃない。日々を楽しくしてくれるからね」小町さん「パラレルキャリアは、両方の仕事が互いに補完し合っていて主従関係がないんです」安原さん「ない、がある時点で、だめです」「その『ない』を目標にしないと」安原さん「大事なのは、運命のタイミングを逃さないってことじゃないかな」安原さん「ねえ、涼ちゃん。世界は何で回っていると思う?」「私はね、信用だと思っている」比奈三章 夏美 四十歳 元雑誌編集者星占いの世界で、月は「母親、妻、子供の頃の出来事、感情、肉体、変化」などを意味します。「・・・それぞれが目の前にいる人のおしりだけ追いかけて、先頭もびりもないの。つまり、幸せに優劣も完成形もないってことよ」「・・・計画や予定が狂うことを、不運とか失敗って思わなくていいの。そうやって変わっていくのよ、自分も、人生も」みずえ先生ーーー私たちは大きなことから小さなことまで「どんなに努力しても、思いどおりにはできないこと」に囲まれて生きています。「嬉しいね。読むだけじゃなくて、手元に置いておきたいと思えるような本との架け橋になれたなら」小町さん四章 浩弥 三十歳 ニート親たちの教えるサンタクロースは、けっして「嘘」ではなく、もっと大きな「本当」です。私たちの中にある「太陽の目」と「月の目」は、そんなふうに協力しながら、どちらも否定せずに世界を受けとることができるのです。好きって、人を救ういい言葉だ。浩弥誰かが誰かを想う。それが居場所を作るということ・・・?浩弥五章 正雄 六十五歳 定年退職「人と人が関わるのならそれはすべて社会だと思うんです。接点を持つことによって起こる何かが、過去でも未来でも」海老川さん「作る人がいるだけじゃ、だめなのよ。伝えて、手渡す人がいなきゃ。一冊の本が出来上がるところから読者の元に行くまでの間に、いったいどれだけ多くの人が関わっていると思うの?私もその流れの一部なんだって、そこには誇りを持っている」千恵「私にとっては、自分が読者として本を買うことも流れの一部なんだよね。出版界を回してるのって、本に携わる仕事をしている人だけじゃなくて、なんといってもいちばんは読者だもん。作る人と売る人と読む人、本って全員のものでしょ。社会ってこういうことだなあって思うんだ」千恵役に立つか、モノになるか。これまでのわたしを邪魔していたのそんな価値基準だったのかもしれない。でも、心が動くこと自体が大切なのだと思うと、やってみたいことはいくつもあった。目に映る日々を、豊かに味わっていこう。ワイドビューで。これからは、好きなものを大切に集めていくのだ。わたしだけのアンソロジーを。正雄
この記事へのコメント